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防水スプレーについて 表革編

2021/03/03 ecute上野店

上野店石田です。今回は防水スプレーの取り扱いについてです。我々はお手入れの際、なるべく防水スプレーは使わずクリームとワックスでお手入れしてくださいとご案内をしております。防水スプレーを使えば雨や汚れに強くなり、一見お手入れも楽になりそうです。それでも我々がお勧めしないのはなぜか。今回のブログでは、我々が防水スプレーをお勧めしない理由を3点お伝えします。

理由①革の風合いを損なう可能性がある為

スコッチグレインで使っている革はおおむね水にあまり強くありません。素材の風合いを生かし、最小限の仕上げに留めている為です。ならば防水スプレーを使った方が良いのではないかと言われそうですが、中々そうはいきません。防水スプレーそれ自体がシミや色落ちの原因になってしまうケースが多々あるからです。とりわけ下記写真のような薄い色・薄化粧の靴はそれが起こりやすいです。

黒の靴でしたらシミや色落ちは生じ難いものの、防水スプレーの使用でツヤが若干落ちます。お好みにもよりますが黒い靴はツヤがあった方がより良く見えますので、その意味でもスプレーの使用は避けていただいた方が良いでしょう。

理由②中・長期の革のコンディションに影響する為

防水スプレーを使えば確かに革は水を弾くようになりますが、同時にお手入れ用のクリームの成分もしみ込みにくくなります。栄養を与え難くなりますので、長い目で見れば革にとってあまり好ましくはありません。スコッチグレインの靴は底の張り替え修理が出来ますが、甲革は修理が出来ません。そして甲革の状態が悪い場合は底の張り替え修理も出来なくなる可能性があります。(修理時の負荷に甲革が耐えられず裂けてしまうため。)つまり甲革の寿命=靴の寿命であるわけです。したがって修理を繰り返しながら長く履くためには、甲革の状態を如何に良好に保つかがカギになってきます。クリーム(+ワックス)を使ったお手入れを愚直に繰り返すのが、その最適解と考えます。

理由③効果が一時的であり、根本的な雨対策にはならない為

防水スプレーは革に撥水作用を持たせますが、あくまで表面だけです。雨に打たれる、その他物理的刺激によって表面の撥水成分が取れればその作用は失われます。(その点シャインオアレイン等で使っている撥水革であれば、撥水成分を中までしみ込ませているため効果が持続します。)通常のカーフ・革底を用いた本来雨用でない靴を防水スプレーを使って無理くり雨天で登板させるよりは、撥水革・ゴム底の靴を別途揃えて履き分けていただいた方が靴が長持ちし経済的です。

例外

勿論防水スプレーを使った方が良い場面もあるでしょう。出張など諸事情で雨用の靴が手元にない中、不運にも雨に見舞われてしまった場合などです。座して雨を待つよりは応急的にでも防水スプレーを使った方が革へのダメージは軽減できるはずです。本来雨の日に履いてはいけない革靴を、やむなく雨天で履かざるを得ない限定的状況下では有効です。

最後に

以上の見解はあくまでも我々の見解であり、それが唯一の正解というわけではありません。また表革(スムースレザー)と起毛革(スエード)では素材の特性上防水スプレーの取り扱いがやや異なります。上記は全て表革のケースです。防水スプレーが役立つ場面も多々あるかと思いますが、しかしなんといっても天気に応じた適時適切な履き分けこそが雨対策の本丸です。防水スプレーはあくまでその補助手段として使ってゆくのが望ましいと考えます。

🐼今日は「耳の日」です

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